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第37回 人の成長をどう判断するのか

人材育成の仕事に携わる人にとって、「人の成長とは何か」という定義をすることはとても有益です。

研修の「効果測定」の話をする前に定義が必要だからです。


言い換えると

「人の成長とは何で判断すべきか」

ということです。


行動の成果だけを見て「あの人はできる、できない」と判断するのは、雑すぎます。


また「あいつは最近目の色が変わってきたな」といった印象面で判断するのも問題です。

評価者の個人的な主観が入ってしまうためです。

人によって価値観や視点が違いますし、客観データの上の判断ではないので評価がバラツキます。


私たち人材育成の仕事をする者は、プロとしてもっと科学的にアプローチする必要があります。

過去の研究から、専門的には人の成長とは、「行動」「認知」「構成」の3つの領域に分類できます。


まず「行動」領域です。

行動領域では、行動の変化に着目します。すべき行動を自分で見出すことも成長ですし、できなかったことができるようになることも成長と言えます。

行動は見えますから周りから見ても変わったことが分かるでしょう。


次に「認知」領域です。

認知領域では、思考の変化に着目します。認知とは自分自身を客観的に見ることです。

経験したことを深く振り返ることで、行動や思考を概念化・抽象化する力が成長していきます。自分に起きた事実を客観視して意味化して行く思考力です。次の行動に影響を及します。


最後に「構成」領域です。

構成領域は他者との関係性の変化に着目します。人間関係の変化も成長の1つです。

関係性は、豊かさと深さで表されます。多様な人脈をもちバラエティーに富んだ関係を作ることも成長ですが、一方で特定の人ととても深い関係を築くことも成長なのです。


この3つの領域は過去の研究者によって基礎理論が確立しています。

例えば、

「行動」

  ワトソンの行動主義やスキナーの行動強化理論

「認知」

  フラヴェルやブラウンのメタ認知やD・ショーンのリフレクション・イン・アクション

「構成」

 ヴィゴツキーの最近接発達領域論やウェンガーの正統的周辺参加論

など先行研究があります。


先人たちが研究してきた理論を活用し、人の成長を「行動・認知・構成」の3つの領域で

整理することはとても有益なのです。


さあ!

『研修担当の皆さん!「行動・認知・構成」の3つの領域で効果を計ろう』

 
 

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