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第3回 「有意義でした」って本当?

更新日:2023年6月23日

皆さんは研修の最後に「受講後アンケート」をとっていますか?


研修の満足度をチェックし、研修を改善するために行われる

「リアクションアンケート」


——————————–

Q1

 この研修の満足度はどうですか?

 ○満足 ○やや満足 ○ふつう ○やや不満足 ○不満足


Q2

 その理由をお聞かせ下さい。

——————————–


このようなアンケートの結果ほど怪しいものはありません。


「満足度平均4.5点」に何の意味があるのでしょう?


Aさんにとっての4点とBさんにとっての4点は違うのです。

人によって価値観が違うのに足して割っても意味がありません。


フリーコメントには


「とても勉強になりとても有意義でした。」

「学んだことを活かしたいと思います。」

「私にとってとても有効でした。ありがとうございました。」


などの言葉がよくあります。


”有意義”、”学んだ”、”有効”などの言葉はあいまいで、何も分かりません。

その先に行動がどうなるのかも不明です。

要は、適当に取り繕っているだけなのです。


受講後アンケートはその存在として致命的な3つの欠陥があります。


1つ目は「他人のための作業である点」です。


研修担当者や講師に向かって書いています。

よって受講生にとって何のメリットもないのです。

なので丁寧に正しく本音を書くことが保証されません。


2つ目は「回答環境がバラバラな点」です。


聞き方(設問の設計)によって捉え方が変わります。

また書くときの指示の仕方によっても状況が変わります。

記述時間が違う、心理的状況が違うのです。

よって受講生全員が同様の環境でないのです。


3つ目は「満足度を上げるテクニックが存在する点」です。


例えば、管理職やリーダー研修の場合、自分のことを話す時間が多いほど、満足度は上がる傾向にあります。

また、若手の場合、最後に発表で盛り上げるなどフィナーレを感動的にすると、満足度は上がる傾向にあります。

満足度のスコアを上げるだけなら、いろんなテクニックがあるということです。


この3つの致命的欠陥によって


満足度のスコアが高い研修が行動変容度が高いとは限らない


ということになるのです。


よって行動変容に着目した場合、研修後の満足度アンケートのスコアや受講生の意見に一喜一憂してもしょうがないのです。


以下の3つが目的の場合は、やる価値はあると思いますが。


・研修ベンダーを入れ替えるための調査

・ダメな講師をあぶりだすための調査

・止める研修を決めるための調査


さあ

『人材育成担当者よ。誤った満足度アンケートを今すぐ止めよう!』

 
 

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